平成26年度 教化研修会報告

平成26年度 教化研修会報告

去る9月10・11日の両日、三峯神社を会場に県内神職66名の参加を頂き、教化研修会を開催しました。

教化研修部では、現代において神社や鎮守の杜に対する畏敬の念を住民は失っていると感じ、鎮守の杜に対する理解を促進し、地域住民と共同して守っていける道を捜索しようと、今回の研修主題を『自然環境への貢献』副題に「鎮守の杜への住民理解をめざして」としました。

講師には、埼玉県農林総合研究センターにて鳥獣害防除担当部長を務める古谷益朗先生、秩父今宮神社宮司・真和総合法律事務所弁護士塩谷崇之先生をお招きしました。

また、講演に加え、アイスブレイクも兼ねた地球環境カードゲーム「My Earth」を行いました。

先ず初めに、古谷先生に「鎮守の杜で暮らす動物と対策について」と題したご講演を頂きました。

野生動物は埼玉県全域に増えており、その理由として食べ物があり、身を隠せる場所がある。どちらかが欠けていたら野生動物は増えていかず、被害も出てこない。なぜ被害が減らないかというと、存在の否定、誤った情報、誤った認識、誤った対策であり、鳥獣害は思い込みや気付きの遅れ、人任せから起きるヒューマンエラーである。鳥獣害は目的達成のための障害のひとつで環境や生活のためには捕獲をして、農業や林業のためには防御をしなければならない。鎮守の杜と神社の被害において鳥獣害対策を考えるには捕獲をしてもまた入ってきてしまうので入らせない、来させないという防御である。

 

 

 

被害の対策としては、餌を与えず、安心して生活できる環境を提供しないで自ら守ることである。野生動物から鎮守の杜を守っていくには、正しい情報と知識の共有、捕獲だけに頼らず、自分のところは自分たちだけで守っていくという考え方の転換、適切な指導や対策をしていき、地域の方々にどのように伝えていくかが大事である。悪いことをゼロにするよりも良いことを積極的に増やしていき、それによって自然と悪いことはなくなっていき変わっていくと述べられました。

 

続いて、塩谷先生に「鎮守の杜をめぐる法律問題~実務上の留意点~」と題したご講演を頂きました。鎮守の杜が減ってきているというが、なぜ減ってきているのか。それは開発が進んでいるのではなく、神社が杜を手放しているからである。神社は開発の被害者ではなくて、我々自身で破壊をしている。そのような問題意識を持っていかなくてはならない。近隣からの苦情や境内地を維持出来ない等、やむを得ないことが多いがそのやむを得ないということを減らしていくということが大事であると初めに述べられました。

社叢を保全するための法令として、環境法、里山や森林の保全に関する法令、他に都市の美観維持に関する法令、神社・寺院境内地の保全に関する法令等があり、社叢が失われていく理由として、大規模開発や環境の悪化、社寺自身による土地売却処分、資源としての伐採、他に維持管理の負担や相隣関係があると述べられました。

最後に、日常の社務としての保護・管理・育成、氏子崇敬者への教化活動・啓蒙活動、「ただの樹木」でないことのアピール、「鎮守の杜」を守る専門家(樹木医、森林インストラクター、社叢インストラクター)の育成を「鎮守の杜」の保全の活動として述べられました。

 

講演後、班別討議として、八班編成にて「My Earth」というカードゲームを行いました。このゲームは、「生き物」カードを使って地球を守る「青い地球プレイヤー」と、「地球温暖化」カードを使って地球を壊す「赤い地球プレイヤー」に分かれて対戦をします。結果としては、「青い地球プレイヤー」が勝利した班が四班、「赤い地球プレイヤー」が勝利した班が二班、引き分けが二班となりました。アイスブレイクも兼ねて行ったゲームでしたが、各班が楽しみながら真剣に取り組んでいました。

次に、班別企画会議として、架空神社における動植物を根源とした諸問題への対策企画会議を行いました。班の振り分け方として、都市部、山間部、中間部に分かれ、「思い」、「マーケティング(対象者)」、「地域資源」を提案し、『コンセプト』となる杜を考え出します。各班の発表後には、時間を設けて肯定、否定意見を出し合いました。各班で様々な神社、杜が出来上がりましたが、なかでも地域交流を重要視する班が多くありました。

今回の研修会での講演、班別会議により地域交流がやはり大切と感じました。神社並びに神職として地域の中心になり、鎮守の杜というものの存在意義を再び地域住民に教えていき、共同して守っていける環境づくりが必要だと感じました。

(教化研修部新井班)

ページの上部へ